「ベンチャーキャピタル業界の現状と課題」
藤井 常雄 様
東京からご多忙のところ、ありがとうございました。
ベンチャーキャピタル業界は、経友会講座で初めてのことと、豊富な体験に基づく講義に受講生が興味深く静聴していました。
1)ベンチャービジネスが公開に至る道は、遠くて険しいこと
2)企業家が尊敬されるカルチャアー助成の必要性
「起業成功者⇒金儲け⇒悪いこと」の風潮が続けば、日本の成長力を失い、国内雇用機会
の拡大もできにくいことがよくわかりました。
11/25は、藤井 常雄氏(商S48、安田企業投資㈱ 代表取締役社長)の「ベンチャーキャピタル業界の現状と課題」でした。
Ⅰ 企業略歴
創 業 1999年4月1日
沿 革 国内ベンチャーキャピタル(VC)の草分け的存在であった「エヌイーディー㈱」(NED、
1972年11月創業)のVC部門の資産・人材を継承して設立。
現在の株主は、損保ジャパン(50%)・明治安田生命(50%)
資本金 4億円 (NED時:長銀グループ62.5%、DKBグループ8.1%、大和証券グループ7.9%、
その他21.5%)
役職員数 52人(2010.7.1現在、常勤のみ、内NED出身者19名、出向者6名)
所在地・本社 東京都千代田区麹町4-2-7 麹町共同ビル9F
米国現地法人 カリフォルニア州メンロパーク(キャピタリスト2名)
Ⅱ 日本の大手VC(「2009年度日本ベンチャーキャピタル等要覧」)
①㈱ジャフコ(英: JAFCO Co., Ltd.)
日本最大手(第一部上場) 資本金332億5167万円 従業員225名 投資残高(1,123社、2,172億円)
②SBIホールディングス 従業員2,492名 投資残高(339社、 1,666億円)
③大和SMBCキャピタル 従業員207名 投資残高(1,051社、1,144億円)
⑩安田企業投資 〃57名 〃( 484社、 200億円)
Ⅲ ベンチャー企業を取り巻く歴史的変遷
1963年 政府の中小企業投資育成法により、東京、名古屋、大阪に中小企業投資育成会社の設立
(第一次VCブーム 1972~73年)・・・製造技術系VC
1972年 民間初の京都エンタープライスデベロプメント設立 NED設立
1973年 日本合同ファイナンス(現ジャフコ)設立
(第二次VCブーム 1982~83年)・・・流通、サビ-ビス系VC
1982年 初の当事業組合を現ジャフコが組成
(中小企業等投資有限責任組合法の制定)
1998年中小企業基盤整備機構のベンチャーファンド事業スタート
2006年ライブドア事件
2008年リーマンショック FA装置メーカー・プロデュース(08年)、半導体メーカー・FOI(10年)粉飾発覚
Ⅳ VCのビジネスモデル
Ⅴ 日米VC投資動向
Ⅵ 当社に於ける日米投資の実例
Ⅶ 日米の投資を比較して
米国:大企業の優秀な技術者のスピンアウトして起業すると
①経営専門の人材の存在
②起業支援するVCにハンズオンのノウハウを備えた人材の存在
③そのVCに集まった膨大な資金の供給
この結果、起業中の経営者の平均収入も相当高い水準にある
日本:大半の産業は、銀行グループを背景としたフルセット型のため、大企業に多面的な人材を抱え込んでいる
VBサイトからは、起業しようとしても事業運営に必要な人材が集まりにくい
投資家は短期的な利益追求するケースが多い(新興市場の不祥事の問題などによる規制強化)
Ⅷ なぜVCによる企業支援が必要か・・・新産業の興隆
米国のVC支援会社(2000年vs2008年)
売上高1.5兆ドル⇒2.9兆ドル
雇用社数.870万人⇒1,210万人(民間の就業者数1億1,500万人の11%)
日本の全企業数(1981年vs2006年)
528万社⇒421万社
Ⅸ VCを取り巻く現在の環境と今後の課題
①年金基金等の長期資金の導入
②優秀なキャピアリスト人材の育成
③投資手法のレべルアップ
④投資回収手段の高度化
⑤企業家が尊敬されるカルチャアー助成への寄与
(文・写真、竹内淳一郎)