「デジタルカメラ産業」
第2講は、竹内 淳一郎(経院H9、日大経済科学研究所 共同研究員、元ミノルタ)「デジタルカメラ産業の海外展開と国内回帰」でした。当初の予定の講師が体調をくずされたため竹内がピンチヒッターをつとめました。
市大写真部OB&現役が応援団に駆けつけてくれました(添付写真)
今年度から学科長は、海老塚先生から脇村先生にバトンタッチされました。
また、経友会講座は、佐々木先生(3月)が退官された後任に、福原先生が担当されています。
経友会は、有田(経S50)、竹内(経院H9、神大営38)、溝川(経44)、出原事務局長(経42)が担当しています。
■講義概要
1. カメラ産業・・・なぜ、デジカメでも、日本カメラメーカーは世界制覇しているのか
(1)フイルム(銀塩)カメラからデジタルカメラへと激変
(2)海外指向:1950年代から欧米輸出、1960年代後半から欧米に販売拠点を展開
1990年代から東アジアに生産拠点 2005年ごろから国内回帰の動き・・・キヤノン:4割目標(内田社長) (3)世界を制覇した品質と価格 2. カメラの品目別・地域別出荷数量推移(1951~2009年) デジタルカメラがフイルムカメラを追い抜く・・・2000年金額、2002年台数
3.海外生産 3.1 主要国の生産数量シェア:中国シフト、国内回帰? 3.2 海外生産比率:カメラ・TV・電子レンジ 80%を超す 3.3 日系カメラメーカーのアジア生産拠点の推移 3.4 キヤノンの生産体制の変遷
4.海外市場開発:日本・ドイツカメラメーカーの米国販売拠点の推移 5. 品質-価格とブランド構築・・・・価格-品質線と各ハンター ①日本カメラ企業:1980年代から「良くて 安い」(価値ハンター)。.
②ドイツ企業(ライカ・ローライ):「高くて良い」(品質ハンター)。
③日本家電企業:日本カメラメーカーとほぼ同じだが、評価品数で約50%と少ない。
④米国企業:主にコダック社で「安くて良い」(価格ハンター)の評価を受ける。
⑤韓国企業(サムソン):2005年新規参入、「安くて良い」(価格ハンター)の評価を受ける。参入時2機種・64点から2009年には機種・67点と機種数
6. 国内・海外のカメラ、レンズ、部品の生産企業調査
日本・①東北地区(2009.3):仙台ニコン(一眼レフ)、フジフィルム(デジカメ)、タムロン(交換レンズ)、岩田光学工業(レンズ)
日本・②諏訪地区(2009.8):オリンパス辰野事業所(デジカメ・レンズ)、諏訪機械製作所(交換レンズ用金物)、平澤電機(デジカメ組立)、
富士ネームプレート(銘板印刷)
タイ(10.3):③タイ・アユタヤ・チェンマイ(2010.3):ニコン(デジタル一眼レフ・交換レンズ)、日電コパル(シャッター)、セイコープレシジョン(シャッター)、HOYA(レンズ)、京セラ(水晶発振子)、ニッカン(基板用フイルム 、OPTREX(液晶表示パネル)
④中国(2005.7):佳能珠海有限公司(デジカメ)、、奥林巴斯(有)深圳・广州(デジカメ)、、東莞信泰光學((デジカメ)、日技城(有)
台湾⑤台湾(2005.3):佳能台灣(デジカメ)、台灣理光股份((デジカメ)、亞洲光學光電股份((デジカメ)、大立光電股份(レンズ)、普立科技股份(デジカメ)
7. まとめ
(1)要素条件:電気工学や機械工学の技術者が豊富
(2)需要要因
①日本人のカメラ好き→国内市場の形成
②新製品や新機能をいち早く試し、業界標準的な製品ヘ
(3)企業戦略・競合関係
①熾烈な国内競争:頻繁に変わる市場シェア
②戦後、早くからのグローバル市場展開・・・グローバルブランド化
③成長性の高い分野へ多角化・・・GDPの伸びを、大幅に上回る ④デジタルカメラ市場:国内家電メーカー、サムソンなどの参入
⑤日本カメラメーカーの戦略
・グローバルに強力なブランドの維持・向上
・価格-品質 価値ハンターの獲得:高機能・高品質と低コストで世界を席巻
・国内回帰:技術のブラックボックス化(技術流失防止)
・ユーザー指向のグローバルなアフターサービス
(4)関連支援産業
①強力な国内エレクトロニクス産業の存在
②産業クラスターの形成(中国、タイ、マレーシア、インドネシア、台湾、ベトナム)
(文、竹内淳一郎)
(写真、出原康雄)