BRICsの中のBRAS(Z)ILの実力とその魅力

2007年度(H19年度)

室 元明 様
「BRICsの中のBRAS(Z)ILの実力とその魅力
―「永遠に未来の大国」から「現実の大国」に- その激動振りを目の当たりにして

ご多忙のなかのご講義、ありがとうございました。

八犬伝での懇親会のとき話がでた、岩尾洋くん(私の高校同期、ブラジル移住、元東洋紡)にメールしたところ、早速メールが届きましたのでご紹介します。
『竹内君 室さんに会ったMailどうもありがとう。 室さんはとても素晴らしいお人で、彼は繊維会社の社長、弊社はその製品を売る販売会社で大変御世話になりました。Golfも時々やりました。
昨年彼と大阪で昼食-ウナギだったと思う-を共にしました。
さて、Brasil旅行のこと、素晴らしいイアデアです。
是非ぜひご来伯下さい。Brasil案内とか何でもさせてもらいます。
そうそう、Brasil旅行について一つだけ注意しておきます。
それはこっちがあんまり素晴らしいので 「帰りたくない」と言う
人が出ないようにしてください. ハ-ハ-ハ-』

1959年の旧三商大写真展:課題「あしたにたくす」
神戸大組写真「新天地を求めて–神戸移住斡旋所–」が
全日本学生写真コンクール優秀校賞を受賞。
そのころ、岩尾洋くんが移住したことが判明(本人に確認予定)。
なんという偶然でしょう!!

新天地を求めて 1959年竹内淳一郎撮影

講義内容について

国際経済論特殊講義の9講目でした。
室さん(在学中探検部所属)は、大変な親伯家のようで、ブラジルの素晴らしさが、講義の端々からわかりました。
とくに、中国の食料基地になりつつあり、日本は長期的に「資源大国として再認識の必要性」
を訴えられました。
 
1.日伯経済関係の歴史
 1885年 日伯通商条約締結
 1908年 移民船「笠戸丸」による日本人移民の開始
 1950年代半ば 日本企業の本格的進出開始
 1970年代 「ブラジルの奇跡」のとき、企業進出ブーム
 1980年代 ブラジルの「対外債務問題」による停滞
 1990年代 日本のバブル崩壊による衰退、撤退
 2000年代 再認識で日本も前向きに
 2008年  ブラジル移住100周年(笠戸丸)
 
 BRICs:Bras(z)il、Russia、Indea、Chinaの造語
 ゴールドマン・サックス社"Dreaming With  BRICs:The Path to 2050" の中で初めて登場
 同レポートでは、ブリックスの現在の経済成長率から考えると、2039年までに4カ国のGDPの合計が
 米国、日本、ドイツ、英国、フランス、イタリアのGDP合計を上回るであろうと報告。
 また、2050年には中国のGDPが世界最大になるとも予想。

2.ブラジルの潜在力
 1)天然資源:鉄鉱石、ダイヤモンド、アクアマリンなど
 2)循環資源:水資源利用率0.2%、さとうきび栽培–エタノール
 3)農畜産物:輸出世界ランキング1~4位に12品目(砂糖、コーヒー、大豆、オレンジジュース、牛肉、鶏肉など)
 4)大抵のものは国産で可能(フルセット型)
  ・1950年代以降の海外企業進出:自動車、造船、電気、食品、繊維などあらゆる分野
  ・1990年代以降の市場開放政策:世界500大企業の450社が進出–日本は完全な出遅れ
 5)世界に誇れる技術
  ・小型ジェット機(EMBRAER)、大型土木工事(イタイプ)、FLEX車(エタノール/ガソリン)、大型バス(マルコポーロ)、
   深海油田発掘技術(ペトロブラス)
 6)ハードのみならずソフト産業も充実
  ・所得税の電子申告、選挙の電子投票、電子カルテなど

3.ブラジルの影の部分
 1)社会、政治
  ・治安と犯罪(大都市の社会不安--金銭目当て)
  ・所得格差(裕福な所得階層10%が、全体所得の50%を占める。2005年ジニ係数0.54で過去最低–改善に向かう
  ・ブラジルコスト:高金利、高税率
  ・硬直化した労働法:高コストの要因、労働者保護(余りにも理想的)
  ・政治家、官僚の腐敗–汚職、賄賂の横行
  ・政策の非整合性、非整合性
  ・公的部門の非効率、肥大
  ・信頼されない司法
 2)ブラジル経済の問題点:なぜ経済成長率がひくいのか
  ・重い税負担–GDPの37%
  ・高金利–公定金利12.5%、公的債務の金利支払い GDPの6~7%
  ・レアル(ブラジル通貨)の過大評価
  貿易収支の大幅黒字(資源の高騰)、高金利–約30%程度高いといわれているも当面高く推移と予想
 3)急がれる構造改革
  ・年金改革:赤字拡大傾向
  ・税制改革:複雑(種類が多い)、高率
  ・労働法改正:余りにも労働者サイド寄り、雇用者増を阻害

4.最近の日伯経済関係の主な動き
 1)資源国として
  ・石油、天然ガス開発(大手商社)
  ・バイオエタノール生産(三井物産、双日、伊藤忠、豊通)
  ・リオドーセ鉱山開発会社に資本参加(三井物産)
  ・ウジミナス製鉄(新日鉄)
  ・セニブラ(紙パルプ)を全額買収(王子製紙、伊藤忠)
 2)市場の大きさ
  ・四輪、二輪車の生産拡大(トヨタ、ホンダ)
  ・食料生産設備の拡大、投資(味の素の工場新設–ブラジルが最大)
  ・インフラ(穀物輸出用港湾ターミナルへ丸紅出資、三井物産の民間鉄道会社、穀物企業向けの貨車リース)

5.ブラジルの魅力
 ・スケールの大きさ–人生観が変わる
 ・おおらかの国民性–人種の多様性
 ・雄大な自然
 ・豊かな食材
 ・温暖な気候
 ・自然災害が少ない
 ・日本人への好印象–移住者のお陰
 ・美男美女–人種の坩堝(混血)、人種問題がない
 ・ブラジル映画、音楽の魅力

;講義前研究科長室で
室元明講師
室元明講師
聴講生