「銀行業界の変遷と地方銀行の今後について」

2010年度(H22年度)

奥野 浩 様

ご多忙のところ、ありがとうございました。

とくに、プラザ合意(1985年)以降、時系列にバブルの発生、崩壊とBIS規制の導入、金融ビッグバン、銀行の再編への解説は、とても理解しやすかったです。

BIS:Bank for International Settlements

京都銀行の健全性、成長性について再認識しました。

講義後、近くにいた2,3人の学生にきいたところ、経済学部生は銀行業界のことがよく理解でき、京都銀行に行きたくなった。法学部生には専門外なのでちょっと難しかったようです。

奥野浩氏(商S51、㈱京都銀行 常務執行役員 営業統括部長)
「銀行業界の変遷と地方銀行の今後について」でした。
 
■講義概要(レジメより)
1.京都銀行 会社概要(2010/3月期)
 創 立     1941(S16)10月
 総資産     7兆1,041億円
 資本金     421億円 
 業務粗利益   933億円(過去最高、地銀12位)) 
 当期利益    155億円(地銀10位)
 有価証券評価益 3,122億円(地銀1位)
  ・日本電産、ローム、京セラ、ニチコン、任天堂などの株式保有
  ・都  銀:三菱UFJ 6,870億円、みずほ2,700億円、りそな1,400億円、三井住友250億円
 自己資本比率 (単体ベース)
         BIS基準 8%以上 当行14.94%(地銀2位)
         国内基準 4%以上 当行12.04%(地銀11位
         格付け R&I:A+ S&P:A
 従業員     3,141人
 拠点数     150ヶ所(店舗外ATM 292ヶ所)
         ・積極的な店舗展開により規模・収益拡大
         ・セブン銀行との提携ATM 13,432ヶ所)
 海外拠点    香港、上海(駐在事務所)
 大阪市大出身者 125人(トヨタ自動車150人)

2.銀行業界の変遷
(1)金融緩和発生の背景
   米国の不況・貿易赤字⇒1985年:プラザ合意(ドル安への協調介入)
   ⇒日本円高により国内不況⇒公定歩合調整による金融緩和
   ⇒輸出伸張によって貿易黒字が拡大⇒国内で余剰資産が発生
    ・金融緩和制作の継続
    ・楽観的な将来予測(土地神話、リゾート法制定)など
   ⇒余剰資産が投機(株や不動産)に向かう
   ⇒バブル発生(実際の価値とかけ離れて株や不動産が上昇)

(2)金融緩和崩壊の引き金と影響
   1990年 大蔵省が土地関連融資の総量規制を導入
   1991年 上昇を続けていた地価が下落へ転換
   ⇒ バブル崩壊
   ⇒不動産関連企業の倒産が増加⇒銀行の不良債権が増加
   ⇒銀行に対する信用不安が発生し、金融機関が破綻
    ・東京協和信用組合、安全信用組合
    ・金融機関の不良債権はどの程度あるのか?
     (不良債権は、ディスクロージャーの対象外となっていた)

(3)「不良債権問題の深刻化」と「破綻金融機関の処理体制」

(4)早期是正処置によるBIS規制導入
   自己資本比率:国際統一基準8%以上 国内基準4%以上

(5)日本版 金融ビッグバンの進展:3つの原則 
   ①Free(市場原則が機能する自由な市場)
   ②Fair(透明で信頼できる市場)
   ③Global(国際的で時代を先取りする市場)

   実現した事項
   ・銀行窓口での投資信託や保険商品の導入
   ・インターネットを利用した株式のオンライン売買(新しい証券会社の設立)
   ・新興企業向けの株式公開市場の開設 
   ・金融持株会社の誕生や異業種の銀行参入など

(6)銀行再編の歴史(都市銀行と地銀)

3.地方銀行の特徴
 63行 店舗数7,521店 ATM 35,287台 従業員133,542人(2010年3月末)
 貸出金   154兆9,575億円
 有価証券  61兆7,696円 
 預 金   207兆5,208億円 
 資本金   2兆5,757億円
 

奥野浩講師

講義全景:田中記念館

(文・写真、竹内淳一郎)