国際物流とパラダイム

2007年度(H19年度)

篠原正人 様

ご多忙のなか静岡から「国際物流とパラダイム—日本が貢献できるもの—」のご講義、ありがとうございました。

友情あふれる同期(アイセック、スキー部)がおられたせいか、講義を楽しんでおられましたね。
同期の皆さんとの壇上での記念写真には、講義名、場所、年月日などの文字入れをしておきました。

AIESEC:Association Internationale des Etudiants en Sciences Economiques et Commercialesの略語
世界約100の国と地域にグローバルネットワークを持つ世界最大規模の学生NPO団体
活動理念:海外インターンシップ事業を通して、次世代の国際社会を担う学生が自己の可能性を発見し発展させるプラットフォームになること
「特定非営利活動法人アイセック・ジャパン(1948年の設立)」のHP
http://www.aiesec.jp/about/index.html

講義内容

国際経済論特殊講義の8講目でした。
私学の先生らしく、わかりやすいトークと図表と写真入りのパワーポイントを使われ、受講生が一斉に、「レジメ(15頁)をめくる音」が聞こえのが印象的でした。

1.海運の生い立ち
 1)西洋
  フェニキア BC15c、バイキング 8-11c、ベネツィア 11c、ハンザ同盟12-16c、スペイン・ポルトガル15-16c
  重商主義 16-18c オランダ17c、イギリス「航海条例1651年」、産業革命 汽船の登場
  欧米海運による世界航路網
     
 2)アジア
  日本・中国・インド・イスラム「海の道」1c~、スペイン・ポルトガルの覇権、英国東インド会社1600年、
  オランダ東インド会社1602年、植民地支配下の海運、日本海運の登場 明治以降

 3)日本
  遣隋使607年、遣唐使630-894年、倭寇14-16c、明と勘合貿易15-16c、ポルトガル人来日1543年、
  朱印船 安土桃山~1635年、鎖国1633-1954年(オランダ貿易)、北前船・檜垣回船・樽回船
  殖産興業 造船・外航海運の発達

2.船の種類:コンテナ船、タンカー、バラ積み船、自動車専用船、客船

3.海運の最近のトピックス
 1)世界の荷動き:アジアが中心、近距離輸送の増加(以下のデータ、2005年)
   ・貨物取扱量:上海港が世界一に(443百万トン)。日本は11位に名古屋港(187百万トン)

   ・コンテナ貨物:東アジアが49.9%を占め第一位。42百万TEU(20フィート換算コンテナ数)

   ・国別コンテナ取扱数
     ①中国(シェア23.1%) ②米国(〃10.1%) ③シンガポール(〃6.1%)④日本(〃4.4%) ⑤韓国(3.9%)
 
   ・日本の海運3社:商船三井、収益はダントツ
     ①日本郵船 売上高2.5兆円 経常利益1,800億円(同率7.1%)
     ②商船三井 〃   1.9〃     〃  2,800〃  (〃14.6%)
     ③川崎汽船 〃   1.3〃     〃  1,280〃  (〃 9.8%)

   ・大手コンテナ船社(船腹保有状況、発注済新造船含む)
     ①Maersk(デンマーク)24.4% ②MSC(スイス)11.8% ③CMA CGM(フランス)8.8% ④Evergreen(台湾)7.5% ⑤Hapag-Lloyd(ドイツ) ⑩日本郵船 ⑪商船三井 ⑬川崎汽船
    
 2)世界的「海運ブーム」
   ・牽引役は石炭・鉄鉱石船・・・バラ積み船
   ・海運市況高騰の背景:中国需要(北京オリンピック・万博)、需要(貨物)>供給(船)、投機的動き(Derivative)

 3)海運企業の勢力範囲

 4)世界的船員・海技者不足

 5)船舶及び運航管理の質の問題

 6)環境問題への対応

4.物流パラダイムの変化
 1)海技者育成が急務

 2)グローバル物流の再検討
  ・物流は「必要悪」である
  ・輸送手段は有限である:中国、インドの民が豊かになるとどうなるの?

5.今後の世界物流に日本が貢献できるもの
 —産業革命以来の「資源多消費型経済」からの脱却— 
 1)環境を破壊しない輸送手段の開発
 2)劣悪な船舶を市場から締め出し
 3)トラック輸送から船舶・鉄道輸送への復帰
 4)無駄な輸送・無駄なサービスの支配
⇒ 人類は地球の征服者でない
 

講義前、研究科長室で佐々木教授と懇談
篠原正人講師
篠原正人講師
講義後の記念撮影
講義後の懇親会

(文・写真 竹内淳一郎)